第一章
たかしは、昔好きだった女の子の事を考えていた。たかしの搭乗していた飛行機が無人島に不時着し数日。たかしは未だに自分以外の人間をこの絶海の孤島で見かけていない。たかしは想像した。このまま助けが来ずに自分がこの島で孤独に野垂れ死に、数十年かけて自分の骨が土に還り、数千年後には地殻変動で自分の骨がどこかの大陸に流れ着く…それは帰還したといえるのか?たかしは訳が分からなくなり、怒りのままに更に想像を膨らませた。そこから更に時が進むと地球が消滅し、太陽系も消滅し、最後には宇宙も消滅するだろう。そうなったとき、自分が今生きていることに意味はあるのだろうか。たかしは急に怖くなった。宇宙に自分を否定されているような、そんな気分になった。たかしは立ち上がった。居ても立っても居られなくなった。何かを為さなければ、自分の生きた痕跡を残さなければ、そう強く思った。足は独りでに前に進みだした。たかしは地平線の先の赤みがかった満月を見つめ、月に向かって海底へ踏み出した。数日後、島にはもう人間の痕跡は無かった。月だけが、島を見つめている。
大問3.
たかしはなぜ島で孤独に死ぬ以外の選択肢を考えなかったのか、以下の選択肢から選べ。(5点)
ア. 周りに人間の気配が無かったから。
イ. 昔好きだった女の子はもういないから。
ウ. 哲学的な思考の末に、生きる意味を見失ったから。
ムーンライト, たかし。

